皆さん、こんにちは。中年です。
仕事、行ってますか?続けてますか?
中年は、なんとか続けてます。
前回、死ぬほど仕事が辞めたくなった中年は、リフレッシュ休暇を活用して友人の会社を見学させてもらいに行ってきました。他業種の様子や経営方針、社長として大切にしていることなどを教えてもらい、中年のサラリーマン根性をぶち壊してもらいに行ってきました。今回は、その体験で感じたことと、学んだこと、そして今の中年の気持ちをまとめようと思います。
まず一軒目は、ワインショップとワインバーを経営している友達のところへ。オシャレなショップとバー。ワインは数千本保管され、きちんと温度管理されていました。
「ワインは生物。温度管理と様子を確認することが大事」とのことでした。
彼はシニアソムリエの資格を持ち、各ワインの様子やベストの時期がわかるようで、「あと何年経った方が良い状態」というのがあるそうです。そして何より大切にしているのが、「そのワインがどんな人にどんな思いで作られて、いまここにあるのか」というワインの歴史です。生産者の努力とこだわり、そして想いをお客さんに伝えること。それを大切にしていました。
仕入れはワインのインポーターから仕入れますが、「いい状態の時期」がわかる分、仕入れてから保管しておく時期が長期にわたるものもあり、すぐに販売しないというこだわりもありました。
売り上げは上々ですが、ワインが好きすぎて、在庫を抱えがちなところが難点だそうです。そして、ワインを右から左に流して利益を得るのではなく、お客さんの好みをできる限り理解し、ベストなワインを選択して提供したいという気持ちが強すぎて、ネット販売に踏み切れないという難しさにぶち当たっていました。
主な支出は、借入の返済と、ショップとバーの家賃、光熱水費、そしてワインの仕入れ。収入は、バーでの収益と、ショップのワイン販売。ワインを在庫として抱えることはありますが、時が経つことでのワインの価値も変わり、より良い状態で価値のあるワインを維持できるようです。生物ではありますが、保存の技術さえあれば長期保存が効くので無駄にはならない。それはワイン特有の良さでもあると感じました。
バーが開店すると、お客さんの要望と好みを聞き、彼がワインを選択していきます。産地や気候の特徴、生産者のこだわりや味の特徴までを説明し、ワイングラスに提供していきます。お客さんはその物語を感じながらワインを口に運びます。驚きと笑顔、そして初めて体験する経験に楽しみを感じながら、ゆったりとして時間を楽しみます。外国人のお客さんには英語で対応し、ワイン通の外国人も納得して喜んでいました。彼のキャラクターは人を楽しませるばかりではなく、落ち着いた時間と癒しをくれる存在なんだと感じました。お客さんは、この空間と時間と美味しいワインを楽しみに来ているんだなと、改めて感じました。
彼から教わったことは、
「お客さんとワインのことを一番に考えること」でした。
彼は社員に言うそうです。「私の顔色を見ながら仕事しないで欲しい。もっとお客さんとワインのことを見て仕事をしてほしい」と。上司や部下・同僚の顔色を見て仕事をするのではなく、クライエントと提供するサービスの質を第一に考えることを思い出させてくれました。
2軒目は美容室経営をしている友達のところへ。
コンビニの4倍存在するという美容室。その中で長年経営を続けている美容師の友達の仕事を観に行かせてもらいました。
圧倒的な清潔感とラグジュアリー感がある美容室。香りにもこだわりがあり、常にほのかないい香りが漂っていました。
まずは経営面について。
主な支出は、借入の返済と家賃、水道光熱費とカラー材やシャンプー類など。収入はシャンプー等の販売とカットやパーマ等の技術料。シャンプー等の販売利益は1割程度で、収益のほとんどは技術料とのこと。
「美容室は単価がいい。だからこれだけの数の美容室が生き残れている」と話す友人。客単価が10,000円の場合、そこにかかる経費は1,000円もかからない。ほとんどが利益になるため、1日2、3人のお客さんが来るだけで、家族経営であれば運営は続けられるとのこと。
この日のお客さんは平日で8人。多い日は一人で12人は切るとのこと。遅い時は開店の10時から夜の22時までカットをするとのこと。この日も、彼は一日立ちっぱなしでした。デスクワークが多い中年からすると慣れない1日でした。
カットをするのは友人ひとりの為、お客さんはその友人に付いているお客さんのみ。常連で来てくれるお客さんは約200人。一見さんも含めて、すべての人に詳細なカルテがありました。来店の日付、カットの内容、カラー材の配分、髪の特徴、本人の要望・こだわり、雑談で得た情報、家族のこと、最近の悩みまで、一人ひとりの人物像がわかる様なカルテになっていました。
来店するお客さんとしては、前回話した内容を覚えてくれているのはありがたいことですし、自分を大切に思ってくれていると感じます。そして、当然ですが前回のカットの内容も覚えているため、同じ様にもできるし、変えることできる。ほとんどのお客さんは、彼を信じて任せている様子でした。そして何より、男性も女性も来た時よりも素敵になって帰っていきました。帰る時のお客さんの笑顔が、このお店の満足度なんだと感じました。
彼から学んだことは、
「『できない』と言わない。どうすればできるかを考える」でした。
美容師の経験が長くなると、「それすると髪が痛みますよ」「それは頭の形的にしない方が良いですよ」「それは髪質的に難しいですね」とできない理由を探しがち。それが彼は気に入らないとのこと。そんなことは分かっている。分かっているけど「やりたい」「そうしたい」というお客さんの要望を最大限に叶えるのが美容師だというのが、彼の持論でした。彼は言います「できないのは己の技術の問題だ。客の問題ではない」と。
とてもプロ意識が高く、常に技術の向上と情報の更新を行う彼。どこの業界でも、常に勉強熱心で、自分を更新していく人が、質の高いサービスを提供できるのだと再確認しました。中年の業界も、資格を活用して働くため、資格をとってからの勉強は個人に任されます。そのため、現場についてからの技術の差は歴然。当然資格をとってから勉強しない人間と、常に勉強を続けて技術の更新に努めている人とでは、大きな差が生まれます。その差を感じながら一緒に働くことの難しさともどかしさ。それに耐えながら仕事をする中年と、それに嫌気がさして独立した彼。業界は違えど、とても共感できる感情でした。
「それに耐えながら仕事をするのと、独立してひとりで突き詰めていくのとでは、どっちもしんどいが、しんどさが違う」とのことでした。本当に、中年もそう思いました。
3軒目は、日本料理屋を経営する友人のところへ。なんとなく早朝に市場にでもいくのかと思っていましたが、彼から言われたのは「朝8時に温泉に来い」とのことでした。温泉に集合し、一緒に朝風呂とサウナへ。「ここでリセットしてから仕事を始めるのがルーティン」とのこと。
温泉を出た後は、野菜の仕入れに八百屋さんへ。旬のものなど店主と話しながら物を選んでいきます。大枠のコース料理の構成はありますが、旬の野菜や魚を見ながら細かいメニューを考えていくそうです。その後は、高速バスのバス停へ。なんと高速バスのバス停で魚を受け取ります。後で分かりましたが、彼は市場やお店で魚を買いません。漁師から直接購入しているようで、漁師が朝取れた魚を締めて、即高速バスに乗せて送ってくれるとのこと。それを昼前に受け取るのが、一番新鮮で一番早く手元に来るとのことでこの方法を採用しているらしいです。とんでもないこだわりでした。漁師もどの漁師でも良いというわけではなく、魚を最高の状態に仕上げられる漁師を選んで送ってもらっているそうです。漁師との関係作りに相当の時間と話し合いを重ねてきたそうです。漁師のこだわりと料理人のこだわりを擦り合わせ、最高の状態で最短で届ける方法を構築したとのことでした。
「素材がすべて。最高の素材を最大限に活かすのが料理人の仕事」と友人は話します。「素材をいじりすぎるのは良くない。足し算をしたがる料理人が多いが、何をして何をしないかが大事」とのこと。
ビル・ゲイツの名言を思い出しました。「私が何をしたかはよく聞かれるが、それ以上に大事なことは、私が『何をしなかった』かだ」と。特に組織や会社は足し算をしたがる。始めることは大事で、始めるのはエネルギーもいる、会社も勢いづくが、始めることより辞めることの方が難しく、引き算ほど大変なことはない。中年の会社も同類だ。「やった方が良い」ことはたくさんある。その中で、何をして何をしないかの選択ができない。やることだけが増えていき、社員は疲弊する。そんな中、「残業するな」。でも「社員は増やせない」の悪循環。中年は思う。何かを始める決断や行動も大事だが、一度始めたことを辞める労力と時間の方が、何より難しく大変なことだと。どこの世界も「何をして何をしないか」の選択が大事なんだと痛感した。
材料をお店に持ち帰った後は、お品書き作りと下準備。彼のお店は「回転」させない。その為、お品書きは予約のお客さんの名前入りとなる。カウンターや個室、すべてコース料理のみの提供で、その席に次のお客さんが来ることはない。一周しかしないのだ。中年は驚いた。一周しかしないお店なんて存在するのだと。
各従業員が下準備に取り掛かり、友人も料理の準備を始める。慣れた手捌きで野菜や魚を捌いていく。従業員に指示を出し、滞りなくコース料理が進むよう、最大限の準備を行う。そして開店を迎える。
正直中年は、「お店が開店してからは迷惑だろうから帰ろう」と思っていました。ワインバーと美容室に行った時は、客席やカウンターに立っていましたが、カウンターで日本料理を出す店で立っているわけにもいかないと思ったので友人に提案しましたが、彼はこう言いました。
「ここからが本番やないか。一番大変な部分であり、一番の見せ場やないか。カウンターに俺と一緒に立って見とけよ」と。
さすがに怖くなってきましたが、言い出したのは自分だったので引くに引けず、割烹着に着替え、カウンターでお客さんを迎え入れることになりました。
当たり前ですが、高級日本料理屋ですので、来るお客さんもお金持ちです。そして料理通、日本酒通、ワイン通の人ばかり。お酒を飲まない中年からすると、知らない言葉のオンパレードでした。コース料理が始まると、そこは一つのショーの様でした。食材の説明からお酒の説明。客が求めるお酒のチョイス。すべてが心地よく流れるように段取りされています。そして、お客さんの要望の一枚上手をいく料理とお酒の提供。目の前のお客さんが、驚きと笑顔と満足げな顔に変わっていきます。それを各従業員たちが滞りなく進めていきます。カウンターでは料理人の手元を見せ、楽しませる。素材の成り立ちと料理の解説。そしてお酒の産地から特徴まで説明し、料理を提供していきます。お客さんは、目の前の料理に物語とプロセスを感じることで、より一層美味しく感じられます。まさにエンターテイメントでした。
すべてもお客さんが帰ったのは夜22時過ぎ。温泉で出会ってから14時間。彼はずっと仕事をしていました。そして23時から片付けと掃除が始まります。帰るのはいつも日付が変わってからだそうです。
彼から学んだことは、「お客さんが分からない、気づかないところまでこだわることに意味がある」ということでした。
どこの産地とか、どんな下処理がされているとか、食べても分からないことは多い。でも、その分からない所への努力と技術に意味があり、料理人としての価値であるとのこと。お客さんを裏切らない努力とこだわりが、お客さんとミシュランの評価につながっているんだと感じました。
専門家は、当然クライエントより知識も技術も高い。だからこそ気づかれずに誤魔化すことや騙すこともできてしまう。手を抜くことも、適当に受け流すこともできてしまう。そんな中、どれだけ真摯に誠実にクライエントと向き合い、最大限の努力とサービスを提供できるかが、どこの世界でもプロなんだと感じました。
今回は、3人の友人でありプロフェッショナルの仕事を見学して中年が感じたことは、「どこの世界も、プロは素敵だ」ということ。周りの言葉やヤジなど気にせず、目の前のお客さんと真摯に向き合い、努力を惜しまず自身の技術の向上と探究心を忘れない。そんな彼らに元気をもらい、中年は今も仕事を続けています。
中年が見るべきは、クライエントであり、自分の知識と技術の向上である。上司や部下の顔色をうかがって仕事をするのではなく、クライエントを裏切らないサービスを提供することが何より大事だと再確認させてもらいました。
おそらく中年自身が、管理職になるにつれフィールドワークから遠ざかることの不安や、育成に携わる時間が増えたこと、そしてたくさんの社員に気を遣い、顔色を伺いながら発言しないといけないことに疲れていたのだと気づきました。なんでクライエントの顔色ではなく、同じ社員の顔色と評価を気にして生きていかないといけないんだと。その苦しさと周りの目に、なんとなく疲れていたのだと感じました。
管理職としての役割は、当然はたしていきますが、他の人がどうだとか、そんなことに捉われることなく、まずは中年自身が成長すること。そして、より多くの地域に役立つプロフェッショナルを育成すること。そこの分野でも育成の課題はあると思いますが、それを諦めず取り組むことが、いまの自分にできることなのかなと思いました。
3人の友人には、本当に感謝です。
また、みんなに会いに行きたいと思います。
夜遅くまで付き合ってくれて、大笑いさせてくれた友人たちにも感謝です。皆さんも、自分の業界や立場に疲れた時は、中年と一緒に語り合いましょう。
それではまた。
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